出産立ち会い時の話

当時の状況

妻と一緒に暮らし始めて三ヶ月が経った頃のこと。

長女は3歳で、まだ妻とは籍を入れていない状態。

長女もようやくワタシに泣かなくはなったが、

まだ「パパ」と呼ばれるには程遠い存在だった。

そんな中、妻の出産予定日が近づいてきた。

ワタシは予定日から2週間の休みを取っていたが、職場の上司には理由を言えず、

「責任を果たしてきます」とだけ伝えていた。

そして予定日前日。

仕事から帰り、夕飯を食べていたとき、突然妻が「…あれ、きたかも」と一言。

なんだって!!!!

こんな急に来るものなのか!? だが、大丈夫!しっかり準備はしてある!

急いで長女をお婆ちゃんに預け、すぐに車を走らせ病院へ向かった。

病院にて

病院に到着すると、事前に連絡を入れていたこともあり、

妻はスムーズに運ばれていった。

そして、取り残されるワタシ。

すると始まる事務手続き。

受付さんから「お父さん、こちらにお名前をお願いします」と言われる。

当然、ワタシの名字は妻とは違う。

受付:「えーと…お父さんですか?」

ワタシ:「違います」

急に怪しいヤツの登場です。

受付:「えーと…では、どなたですか?」

ワタシ:「…誰なんですかね。でも、関係者です」

さらに深まる怪しさ。

それでもなんとか事務処理を終え、

看護師さんに「これから長いですよ」と言われる。

「何時間でも待つぞ!」と覚悟を決めたワタシ。

そんな矢先、妻から「ちょっと買ってきて」と買い物を頼まれ、

近くのスーパーへ向かう。

しかし、病院に戻ると、院内の空気が一変していた。

出産立ち会い

看護師さんに呼ばれ、控え室へ。

そして立ち会いに向けて着替えをし、待機。

病院に着いてから、まだ1時間ほどしか経っていない。

すると、分娩台のある部屋へと案内される。

横たわる妻、真剣な表情の先生と看護師さん。

当たり前だが、皆…本気だ!!

ワタシはこういう本気の空気が苦手で、

耐えていないと笑ってしまいそうになる。不謹慎ですよね…すみません。

出産

頑張っている妻と、声がけをしている看護師の方々。

妻の横で手を握りながら、「皆さん本気だな〜」と場違いな気持ちになり、

ワタシだけ空気が違うなと若干の焦りを感じながら見守っていた。

そんな中、先生が「切るしかないか」と呟く。

「えっ、切るの!?(焦)」と、

ワタシが驚いていると、看護師さんが「まだ大丈夫です」と冷静に対応。

このやりとりを見て、「ドラマみたいだな…」と、少し感動すら覚えた。

そして――

ついに次女が誕生。

感動の空気に包まれる中、ワタシはというと…

血が苦手なせいで、次女についた血やその匂いが気になり、

思ったより感動が薄れてしまっていた。

時間にして30分ほど。

出産は何時間にも及ぶこともあると聞いていたが、

思っていたよりもずっと早く終わってしまった。

こうして、ワタシの立ち会い出産が終わったのだった。

出産後

妻と次女は1週間ほど入院することに。

ということで、ワタシと3歳長女の2人生活がスタート!

そしてここからが本当の試練だった。

普通なら、パパと娘のごくごく普通な生活。

しかし、ワタシは長女にとって、最近よく家にくるオジサンのような存在。

朝起きるとワタシを見て「ママー!」と泣き、夜寝る時も「ママー!」と泣く。

そりゃそうだ。

大好きなママに会えず、パパでもないオジサンと一緒にいるのは、

3歳児にとって辛すぎる。

保育園に送る時も、事前に連絡して事情を説明していたとはいえ、

見慣れない男性が毎日、泣き顔の子どもを送迎していたら、

周りから見れば怪しいことこの上ない。

夜の寝かしつけも一苦労。

布団に入るとワタシはすぐに寝てしまい、

起きると寝てる長女が隣にいる…もしくはいない。

いない時は隣の部屋で、普通に1人でテレビを見ていたりした。

そんな長女を見て、「たくましいな」と感じたのを今でも覚えている。

たった1週間のことだったが、ワタシの人生の中でもトップ3に入るほど濃密な日々。

本当に修行のような1週間だった。

これから立ち会い出産を検討しているパパへ

ワタシが立ち会ったのは、妻の希望と周囲の勧めがあったからです。

「感動するから」「絶対立ち会ったほうがいい」と言われ、

立ち会ったものの、正直私は特に感動しませんでした。

ですが、これは予想通りでした。

本気の空気と血が苦手なワタシにとって、感動よりも動揺のほうが大きかったのです。

だから次回があるなら、ワタシは立ち会わないと思います。

不謹慎なヤツが立ち会うのは、あの場にいる方々に失礼なので。

とはいえ、貴重な経験をさせてもらったのも事実です。

出産に立ち会うのは、希望しただけで叶うものではありません。

妊娠している妻の存在が、必要不可欠です!

迷っているパパがいたら、

ワタシは「一度経験してみるのはあり」だと背中を押したいです。

でも過度な期待は禁物です。

ワタシの場合、病院についてから1時間で分娩室に案内され、

30分で生まれました。

日にちも予定日前日です。

妻はワタシの想像を遥かに超える大変さを経験したと思います。

しかし、男性であるワタシにとってはスムーズすぎる出産でした。

もし、もっと違うケースだったら、感想も違っていたかもしれません。

不謹慎すぎて参考にならないかもしれませんが、

これから、素敵なパパになる誰かの参考になれば幸いです。